不動産投資の中でも、近年とくに注目を集めている分野が「ホテル不動産投資」です。
2024年以降、国内外の投資家からホテル物件への関心は急速に高まり、取引価格や投資額はコロナ禍以前を上回る水準に達しています。
その背景には、インバウンド需要の本格回復、外国人観光客の増加、円安による投資環境の変化、そして2025年に開催された大阪・関西万博を契機とした都市価値の向上があります。
ホテルは今や単なる宿泊施設ではなく、事業性と資産性を併せ持つ不動産投資対象として再評価されています。
本コラムでは、最新の市場動向を踏まえながら、ホテル不動産投資の基本、収益構造、利回り、物件選定、リスク、そして今後の展望までを網羅的に解説します。
目次
不動産投資におけるホテルという選択肢

ホテル不動産投資とは、宿泊施設として運営されるホテル物件を取得し、賃料収入や事業収益を得る不動産投資です。
マンションやオフィスといった居住用・事業用不動産とは異なり、「宿泊需要」という変動性の高い市場を前提に収益が成り立つ点が大きな特徴です。
居住用不動産との違い
居住用賃貸不動産は、入居者が決まれば月々の賃料が比較的安定して入ってくる一方、ホテルは以下の要素に収益が大きく左右されます。
- 観光・ビジネス需要の増減
- インバウンド(外国人観光客)の動向
- 平日・休日、繁忙期・閑散期の稼働率
- 宿泊単価(ADR)の設定
- 競合ホテルの新規開業や価格競争
このように、ホテル投資は単なる「不動産保有」ではなく、「事業としての経営要素」を含む投資である点を理解する必要があります。
ホテル不動産投資の主な収益モデル
ホテル投資の収益モデルは、大きく分けて以下の2つがあります。
① 固定賃料型(マスターリース型)
② 変動賃料型(事業連動型・運営参加型)
それぞれ詳しく見ていきましょう。
① 固定賃料型(マスターリース型)
ホテルオペレーターに建物を一括で賃貸し、
稼働率や売上に関係なく、毎月一定の賃料を受け取る方式です。
特徴としては以下のようなことが挙げられます。
- 賃料収入が安定し、収益予測が立てやすい
- 運営リスクはオペレーター側が負う
- 利回りは比較的抑えめになりやすい
このような固定賃料型(マスターリース型)のホテル不動産投資は、不動産投資の経験が浅い投資家にとって取り組みやすい選択肢といえます。
ホテルの稼働率や宿泊単価といった日々の運営状況に左右されにくく、あらかじめ定められた賃料収入を得られるため、収益の見通しが立てやすい点が特徴です。
また、短期的な利益の最大化よりも、安定した収益を長期的に確保したい投資家にも適しています。市場環境の変動があっても賃料が大きく変動しにくいため、資産保有を前提とした中長期の不動産投資戦略と相性が良いといえるでしょう。
さらに、ホテルの経営や日常的な事業運営に深く関与することなく、不動産オーナーとしての立場に専念したい投資家にも向いています。運営はホテルオペレーターが担うため、集客や人材管理、価格調整といった実務負担を抑えながら、不動産投資としてのメリットを享受できる点が大きな魅力です。
② 変動賃料型(事業連動型・運営参加型)
ホテルの宿泊売上や利益に応じて、
収益が変動する仕組みの投資モデルです。
特徴としては以下のようなことが挙げられます。
- 稼働率・宿泊単価が上がれば収益も拡大
- 市場好調時には高い利回りが期待できる
- 景気後退や需要減少時には収益が下振れする
変動賃料型や事業連動型のホテル不動産投資は、安定性よりも成長性を重視する投資家に向いています。宿泊需要や市場環境の変化によって収益が上下するため、一定のリスクを許容しつつ、市場拡大の恩恵を積極的に取り込みたいと考える投資家に適した投資手法といえるでしょう。
また、インバウンド需要の回復や外国人観光客の増加といったマクロ動向に関心があり、エリアごとの宿泊需要や競合状況を冷静に見極められることも重要です。
単に利回りの数字だけで判断するのではなく、立地特性や観光資源、将来的な市場価値を踏まえた中長期的な視点で投資判断ができる投資家ほど、ホテル投資の特性を活かしやすいといえます。
近年増えている「ハイブリッド型スキーム」
近年では、固定賃料型と変動賃料型を組み合わせた「最低保証賃料+売上連動報酬」といった柔軟な投資スキームも増えています。
この方式では、一定の最低賃料で下振れリスクを抑えつつ、市場が好調な場合は上振れ収益を享受できるというバランスの取れた収益構造を実現できます。
特に、インバウンド需要が回復・拡大しているエリアでは、リスク管理と収益性の両立を図る投資手法として注目されています。
2024〜2025年のホテル市場動向と投資環境
インバウンド需要の本格回復
2024年以降、日本を訪れる外国人観光客数は大幅に回復し、主要都市では過去最高水準に近い水準で推移しています。また、円安の影響もあり、日本の宿泊価格は海外から見ると割安感が強く、都市部・観光地を中心に宿泊需要は堅調です。
東京・大阪・京都などの主要都市では、稼働率の上昇と平均客室単価(ADR)の改善が同時に進み、ホテル物件の収益性を大きく押し上げています。
大阪・関西万博開催後のホテル市場と投資評価

2025年に開催された大阪・関西万博は、関西圏のホテル市場に大きな影響を与えました。
開催期間中は国内外から多くの来訪者が集まり、ホテルの稼働率や宿泊単価は高水準で推移しました。注目すべきは、万博が単なる一過性のイベントにとどまらず、開催を通じて関西エリアの国際的な認知度や都市価値が向上した点です。万博開催によって形成された人の流れや都市整備は、イベント終了と同時に消えるものではなく、開催期間中に整備された交通インフラや再開発エリア、観光動線の定着は、その後の観光・ビジネス需要にも影響を与え、ホテル市場全体の底上げにつながっています。
特に関西圏では、万博を通じて国際的な認知度が高まったことで、外国人観光客の宿泊需要が一定水準で維持される傾向が見られます。これにより、宿泊単価や稼働率が安定しやすい環境が形成され、ホテル不動産の収益性や資産価値にもポジティブな影響を及ぼしています。
このように、大阪・関西万博は単なる一過性のイベントとして捉えるのではなく、イベント終了後の市場環境や需要構造の変化まで見据えることが、ホテル不動産投資における現実的かつ重要な判断軸となるでしょう。
ホテル不動産投資の収益構造と利回りの考え方

ホテル投資における利回りは、単純な表面利回りだけでは判断できません。さまざまな要素が複合的に収益へ影響します。
収益に影響するさまざまな要素(一例)
- 稼働率
- 平均客室単価
- オペレーターの営業力・経営力
- 市場全体の宿泊需要
- 人件費や修繕費などの運営コスト
近年は宿泊需要の回復により利回り改善が見られる一方、ホテル物件の価格も上昇しています。そのため投資家には、短期的な高利回りよりも、安定したキャッシュフローを生み出せるかどうかという視点が求められています。
ホテル投資|物件選定で重視すべきポイント
ホテル不動産投資では、「ホテルであればどれも同じ」という考え方は通用しません。
立地や価格、表面利回りだけで判断すると、イベント終了後や市場環境の変化によって収益が大きく変動するリスクがあります。特に万博後の市場では、需要の選別が進み、物件ごとの収益力や価値の差がより明確になっています。
そのため、ホテル投資を検討する際には、短期的な稼働実績や話題性に惑わされず、長期的に安定した収益を生み出せるかどうかという視点で物件を見極めることが重要です。ここでは、万博後の市場環境を踏まえたうえで、ホテル不動産投資において特に重視すべき物件選定のポイントについて解説します。
ポイント① 立地と需要の持続性
ホテル不動産投資において最も重要なのは、立地が生み出す宿泊需要が一時的なものか、それとも継続性を持つものかを見極めることです。
大型イベントや観光ブームによって一時的に稼働率が上昇するエリアであっても、イベント終了後に需要が急減すれば、収益は不安定になりやすくなります。
そのため、物件選定では観光客だけでなく、ビジネス利用、訪日外国人、国内出張需要など複数の需要層が重なっているかを確認することが重要です。
主要駅や空港からのアクセス、周辺のオフィス集積、展示会場や商業施設の有無などを総合的に判断し、万博やイベント終了後も一定の宿泊需要が維持される立地かどうかを見極める必要があります。
ポイント② ホテルタイプと運営形態
ホテルの収益性は、物件の立地だけでなく、どのホテルタイプとして運営されるかによっても大きく左右されます。
ビジネスホテルは比較的安定した稼働率が見込める一方で、宿泊単価は抑えられる傾向があります。
一方、シティホテルや観光型ホテルは、宿泊単価を高く設定できる可能性がある反面、景気や観光動向の影響を受けやすいという特徴があります。
また、固定賃料型か変動賃料型かといった運営形態によっても、投資家が負うリスクの性質は異なります。
安定収益を重視するのであれば固定賃料型、成長市場の恩恵を取り込みたい場合は変動賃料型が選択肢となるなど、自身の投資スタンスとホテルタイプ・運営形態が合致しているかを確認することが不可欠です。
ポイント③ オペレーターの経営力
ホテル不動産投資では、建物や立地と同様に、運営を担うオペレーターの経営力が物件価値を大きく左右します。
近年は人手不足や人件費の上昇、エネルギーコストの高騰など、ホテル経営を取り巻く環境が厳しさを増しており、こうした課題に柔軟に対応できるかどうかが重要な判断材料となります。
具体的には、過去の稼働率や収益実績、価格戦略、外国人観光客への対応力、デジタル化や省人化への取り組みなどを確認し、安定した運営体制を構築できるオペレーターかどうかを見極める必要があります。
オペレーターの経営力は、短期的な収益だけでなく、将来的な物件価値や売却時の評価にも直結する要素であるため、慎重な見極めが求められます。
ホテル投資におけるリスクと今後の展望

ホテル不動産投資には、市場環境の変動やインバウンド需要への依存、運営コストの上昇、さらには自然災害や突発的な社会情勢の変化など、特有のリスクが存在します。特に宿泊需要は景気や国際情勢の影響を受けやすく、稼働率や収益が想定を下回る局面も十分に考えられます。そのため、ホテル投資を検討する際には、こうしたリスクを前提としたうえで、無理のない収益計画やリスク設計を行うことが不可欠です。
今後のホテル不動産投資においては、短期的な高収益を狙う姿勢よりも、市場変動に耐えうる事業性と中長期的な資産価値を重視する考え方が、より重要になっていくと考えられます。具体的には、特定エリアや需要層に依存しすぎない分散戦略や、経営力のあるオペレーターの選定、契約条件の工夫によって下振れリスクを抑えることが、安定した投資成果につながります。リスクを正しく理解し、将来を見据えた戦略を描くことが、万博後のホテル市場においても持続的な価値を生み出す鍵となるでしょう。
まとめ|ホテル投資は収益性・リスク・物件価値を総合的に判断すること
ホテル×不動産投資は、インバウンド回復や観光政策、そして大阪・関西万博開催を経て高まった国際的な注目度を背景に、成長市場としての地位を確立しつつあります。一方で、価格上昇や経営コスト増加といった課題も顕在化しており、投資判断の質がこれまで以上に問われています。
市場動向を正しく捉え、収益性・リスク・物件価値を総合的に判断することが、これからのホテル不動産投資成功の鍵となるでしょう。