不動産を複数人で所有する「共有名義」は、相続や共同購入などで一般的に発生しますが、売却時には予想外のトラブルに発展するケースが少なくありません。特に「全員の同意が必要なのか」「一人が反対したら売れないのか」「手続きはどう進めるのか」といった疑問を持つ方は多くいます。
本コラムでは、共有名義不動産の基本から売却手続き・注意点まで、実務的な視点から徹底解説します。
目次
- 1 共有名義の不動産とは?持分・割合・名義の基本を解説
- 2 共有名義の不動産は勝手に売却できる?全員の同意が必要な理由
- 3 相続で共有名義になった不動産によくあるケース
- 4 共有名義不動産の売却方法と選択肢|同意の状況別に解説
- 5 持分のみ売却する方法|第三者・不動産会社への買取は可能?
- 6 土地の場合は分筆できる?共有名義不動産の整理方法
- 7 共有名義不動産売却の手続きと必要書類一覧
- 8 司法書士・不動産会社は何をしてくれる?専門家に依頼するメリット
- 9 共有名義不動産売却にかかる価格・税金・費用の注意点
- 10 共有名義不動産売却で起こりやすいトラブル3パターン
- 11 まとめ|共有名義の不動産売却は早めの判断と専門家相談がマスト
共有名義の不動産とは?持分・割合・名義の基本を解説
共有名義とは何か
共有名義とは、一つの不動産を複数人が共同で所有している状態を指します。各共有者はその不動産に対して「持分」という権利を持ちます。主に以下の場面で発生します。
- 相続による共有:親が亡くなり、複数の子供が不動産を相続した場合
- 共同購入による共有:夫婦や親子が資金を出し合って購入した場合
単独名義と比べ、売却や活用の際に共有者全員の意思決定が必要となるため、手続きが複雑になりがちです。
持分と割合の考え方
持分は「2分の1」「3分の1」などの割合で示されます。相続の場合は法定相続分、共同購入の場合は出資額の割合が目安となります。
重要なのは、持分はあくまでも不動産全体に対する権利であり、特定の場所を独占できるわけではない点です。持分2分の1でも、建物の半分だけを使えるわけではなく、不動産全体を他の共有者と共同で使用する権利を持つことになります。
登記簿上の名義人・名義の確認方法
共有名義や持分割合は、登記簿謄本(登記事項証明書) で確認できます。法務局の窓口(600円/通)またはオンライン申請(480円〜)で取得可能で、所有者以外でも請求できます。
登記簿の「権利部(甲区)」には、所有権に関する事項が記載されており、共有名義の場合は各共有者の氏名・住所・持分割合が確認できます。売却を検討する際は、まず登記簿で現在の共有者と持分割合を正確に把握することが重要です。
注意しなければならないのは、登記情報が必ずしも最新の状態を反映しているわけではない点です。相続が発生していても相続登記が完了していなければ、亡くなった方の名義のままになっています。2024年4月の相続登記義務化以前に発生した相続については、未登記のケースが今も数多く残っており、「売ろうと思ったら登記名義人がすでに亡くなっていた」というケースは珍しくありません。売却手続きの前に、司法書士に依頼して登記状況を確認しておくと安心です。
共有名義の不動産は勝手に売却できる?全員の同意が必要な理由

不動産売却は「処分行為」にあたる
民法第251条では、「各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、共有物に変更を加えることができない」と定められています。不動産全体の売却は「変更行為(処分行為)」に該当するため、共有者全員の同意が必要です。つまり、物件全体を売却するためには、その権利を有しているすべての人の同意が必要ということです。
一部の共有者が勝手に売却しようとすると、契約自体が無効になるリスクがあるため注意が必要です。
全体売却と持分売却の違い
全員の同意がなくても売却ができるのは「持分売却」を行うケースです。全体売却と持分売却には、それぞれ以下のような特徴があります。
| 全体売却 | 持分売却 | |
|---|---|---|
| 必要な同意 | 共有者全員 | 不要(自分の判断のみ) |
| 売却価格 | 市場価格に近い | 市場価格の3〜5割程度 |
| 買主の見つけやすさ | 見つかりやすい | 専門業者に限られる |
全体売却は市場価格で売れる可能性が高い反面、全員の合意が必要です。持分売却は他の共有者の同意不要ですが、価格が大幅に下がります。それぞれ一長一短です。
売買契約に誰が関与するのか
全体売却の場合、共有者全員が売買契約書に署名・押印する必要があります。遠方に住む共有者や移動が困難な共有者がいる場合は、委任状を作成して代理人に手続きを委任することも可能ですが、実印の押印と印鑑証明書の添付が必要となります。
相続で共有名義になった不動産によくあるケース
親の死亡後に兄弟で共有
最も一般的なケースです。親が亡くなり、子供複数人が法定相続分に応じて不動産を共有相続した場合がこれにあたります。「とりあえず共有名義にしておこう」と決めたり、遺産分割協議がまとまらないまま放置されたりすることで共有状態が続きます。
遠方・疎遠な名義人がおり、手続きが難しい
共有者の一人が遠方や海外在住の場合、手続きのための書類取得(在留証明書やサイン証明書など)が複雑になり、意思決定に時間がかかります。また、長年交流のない共有者がいる場合、連絡先の確認から始めなければならないこともあります。
時間が経つほどトラブルに発展しやすくなる
共有状態を放置すると、以下のリスクが高まります。
- 共有者の増加:共有者が死亡すると持分がさらに相続され、数次相続※を経ることで関係者が10名以上になるケースも
- 固定資産税の負担問題:共有者全員に連帯納付義務があるが、誰が払うかで揉めることがある
- 建物の老朽化:修繕費の負担について合意が取れず、必要なメンテナンスが行われないまま価値が下落し続ける
- 特定空き家への指定リスク:管理が行き届かなくなった空き家は自治体から指定を受け、固定資産税が最大6倍になるケースもある
※数次相続:相続手続きをしないまま相続人が亡くなることで相続が何世代にも重なり、共有者が増えてしまう状態
2024年4月からは相続登記が義務化され、相続を知った日から3年以内に登記しなければ10万円以下の過料が科される可能性があります。「とりあえず共有のまま」という先送りが、将来的に大きなコストとリスクを生み出すことを念頭に置いておく必要があります。
共有名義不動産の売却方法と選択肢|同意の状況別に解説

共有名義不動産の売却は、共有者の状況によって取るべき対応が異なります。①全員の同意が取れている、②一部の共有者が反対している、③そもそも連絡が取れない などさまざまなケースがあります。具体的にケースを見ながら、自分がどのケースに当てはまるかを確認してみましょう。
①全員同意が取れる場合
共有名義の不動産を売却するに当たっては、このケースが一番理想でありますが、注意点があります。まず共有者全員で売却価格・時期・代金分配方法・諸費用の負担割合について協議し、合意内容を書面(覚書など)に残しておくことが重要です。口頭での合意だけでは、後に「言った・言わない」のトラブルが発生しやすくなります。
特に代金の分配については、持分割合通りに分けるのか、生前の介護負担など事情を考慮して変えるのかについて、売却前に全員が納得した形で決めておく必要があります。決済日当日に揉めることのないよう、事前の合意形成が成否を左右します。
②一部の共有者が反対している場合
一部の共有名義人が反対する場合はよくあるケースの1つです。その際には反対理由を丁寧に確認し、条件を調整することで合意できる場合があります。たとえば「価格が不満」なら複数社の査定結果を提示する、「住み続けたい」なら他の共有者が持分を買い取る代償分割を提案するなど、反対理由に応じた対応が有効です。感情的な対立が続く場合は、弁護士など第三者を介在させることで冷静な協議に持ち込みやすくなります。
協議での解決が難しい場合は、共有物分割請求という法的手続きを検討できます。裁判所が関与し、最終的には不動産全体を売却して代金を分配する「換価分割」が命じられることもあります。訴訟には時間と費用がかかるため、あくまで最終手段として位置づけるべきですが、一人でも反対者がいる限り永遠に売却できないわけではないという点は覚えておく価値があります。
③連絡が取れない共有者がいる場合
連絡が取れない共有者がいるというのもよくある共有名義のトラブルです。その場合、戸籍の附票で住所を調査し、手紙で連絡を試みます。それでも所在が不明な場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立てることができます。管理人が選任されれば、一定の条件下で売却手続きを進めることが可能です。
持分のみ売却する方法|第三者・不動産会社への買取は可能?

それでも全体売却の合意が難しい場合、自分の持分だけを売却するという選択肢があります。ただし、持分売却には価格面・リスク面で注意すべき点が多くあります。仕組みと注意点を正しく理解した上で、慎重に判断することが重要です。
持分売却の仕組み
共有持分とは、共有不動産に対して各共有者が持つ所有権の割合のことです。たとえば3人で共有している場合、それぞれが「3分の1」の持分を持ちます。この持分は、民法上それぞれの固有の権利であるため、各共有者は他の共有者の同意なしに自分の持分だけを売却できます。ただし、持分のみを購入する一般の買主を見つけることは実務上ほぼ不可能です。持分を取得しても不動産全体を自由に使用・処分できるわけではなく、一般の買主にとってメリットが乏しいためです。
第三者に売却する際の注意点(価格・リスク)
持分売却では市場価格の3〜5割程度しかつかないのが現実です。また、購入した第三者が残りの共有者に対して強引な交渉や共有物分割請求を行う可能性もあり、残る共有者にとってのリスクも大きくなります。
不動産会社による持分買取の特徴
持分買取専門業者は、持分取得後に残りの共有者と交渉して不動産全体を取得することを目的としています。そのため、買取価格は低く設定されます。
業者によっては、持分を取得後に残りの共有者に対して賃料請求(不法占拠を理由とした請求)や共有物分割請求訴訟を矢継ぎ早に起こすケースもあります。そのような業者が共有者として加わることで、元々良好だった共有者間の関係が著しく悪化するリスクもあります。持分の売却先を選ぶ際は、相手が誰であるかをよく確認することが重要です。
持分売却は、「他の共有者との関係が修復不可能で、一刻も早く共有関係から抜け出したい」という場合の最終手段と考えるべきです。可能な限り、全体売却か共有物分割請求を先に検討しましょう。
土地の場合は分筆できる?共有名義不動産の整理方法
共有名義の土地であれば、売却以外に「分筆」という方法で共有状態を解消できる場合があります。全員で一緒に売却するのではなく、土地を物理的に分割して各自が単独所有する形に整理できるのが特徴です。ただし、分筆できるかどうかは土地の条件によって異なります。
分筆とは何か
分筆とは、一筆の土地を複数の土地に分割する登記手続きです。共有の土地を分筆することで、各共有者が単独所有する土地を持てるようになり、共有状態を解消できる可能性があります。
分筆できるケース・できないケース
分筆が可能な条件は以下の通りです。
- 分筆後の各土地が建築基準法の最低敷地面積を満たすこと
- 分筆後に接道義務(幅4m以上の道路に2m以上接道)を満たすこと
- 共有者全員の同意があること
一方、建物が建っている場合は建物をまたいでの分筆ができません。また、土地に抵当権が設定されている場合は、債権者の承諾が必要です。
分筆後の名義整理と売却
分筆後、土地家屋調査士が分筆登記を行い、司法書士が持分移転登記を行うことで、各共有者が単独所有の土地を持てるようになります。その後は、各自が自由に売却や活用を行えます。ただし、分筆には測量費用(30〜100万円程度)がかかるため、費用対効果を事前に確認することが重要です。
共有名義不動産売却の手続きと必要書類一覧

共有名義不動産の売却は、単独名義と比べて関与する人数が多い分、事前の準備と書類収集に時間がかかります。流れと必要書類を把握しておくことで、手続きの遅延やトラブルを防ぐことができます。ここでは売却の流れから必要書類、委任状の活用まで順を追って確認していきましょう。
売却までの流れ
売却までの流れをまとめてみました。
- 事前準備:登記簿謄本の取得・権利関係の確認、共有者間での協議・合意形成
- 査定依頼:複数の不動産会社に査定を依頼し、共有者全員で売却価格を合意
- 媒介契約の締結:共有者全員(または委任状を用いた代表者)が契約。専任媒介・専属専任媒介・一般媒介の中から選択
- 売却活動:不動産会社が買主を募集(通常1〜3ヶ月。人気物件なら短期間、売りにくい物件は半年以上かかることも)
- 売買契約の締結:共有者全員が署名・押印。重要事項説明書の内容確認も全員で行う
- 決済・引渡し:残代金の受領、所有権移転登記、固定資産税等の精算、売却代金の共有者への分配
このような流れで売却が完了した後も、翌年の確定申告が必要になる場合があります。譲渡所得が発生した各共有者は、それぞれ自分で確定申告を行う必要があるため、早めに税理士に相談することをお勧めします。
必要書類一覧
共有者全員が準備する書類は以下の通りです。
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 登記識別情報通知(権利証) | 紛失の場合は司法書士による本人確認手続きが必要 |
| 印鑑証明書 | 発行から3ヶ月以内のもの |
| 実印 | 売買契約書・委任状への押印用 |
| 本人確認書類 | 運転免許証・マイナンバーカード等 |
| 住民票 | ※登記簿上の住所と異なる場合に必要 |
その他、土地の場合は測量図・境界確認書、建物の場合は建築確認済証なども必要となります。
委任状が必要になるケース
遠方在住・高齢・病気などで立会いが難しい共有者は、委任状を作成して代理人に手続きを委任できます。委任状には実印の押印と印鑑証明書の添付が必要で、売買契約時と決済時でそれぞれ必要になります。委任の範囲(契約締結・代金受領・登記申請など)は明確に記載しておきましょう。
司法書士・不動産会社は何をしてくれる?専門家に依頼するメリット

こういった共有名義不動産の売却には、登記・売却活動・税務など複数の専門領域が絡みます。それぞれの専門家が何を担うのかを理解しておくことで、依頼のタイミングを逃さず、スムーズに手続きを進めることができます。
司法書士が関与する手続き
司法書士は、不動産の権利に関する登記手続きの専門家です。主な業務は以下の通りです。
- 登記簿の調査と権利関係の確認(抵当権・差押え・仮登記の有無など)
- 売買契約書の登記上の問題点チェック
- 決済時の本人確認・書類確認への立会い
- 所有権移転登記・抵当権抹消登記の申請
登記識別情報(権利証)を紛失している場合も、司法書士が本人確認情報を作成することで手続きを進めることができます。また、相続登記が未完了の場合は、売却前に司法書士へ相続登記の手続きを依頼する必要があります。
不動産会社に依頼できること
不動産会社は売却活動全般を担います。査定・買主募集・価格交渉・契約書作成・重要事項説明・決済サポートまで、売却に関わる手続きをトータルにサポートします。また、共有者間の調整が難しい場面でも、第三者的な立場から解決策を提案してくれることがあります。
ワンストップで進める重要性
共有名義不動産の売却では、不動産会社・司法書士・税理士・場合によっては弁護士が関与します。これらの専門家が連携してワンストップで対応できる体制を選ぶことで、手続きの遅延やミスを防ぎ、共有者の負担も軽減できます。
例えば、不動産会社が売買契約の条件を司法書士に共有しながら進めることで、「決済当日に書類が揃わなかった」というトラブルを防ぐことができます。また、税理士が売却益の試算を早期に行うことで、共有者間の代金分配について公平な合意を形成しやすくなります。
共有者が多い場合・相続が絡む場合・遠方在住者がいる場合など、状況が複雑なほど専門家間の連携が重要になります。「売却を相談した不動産会社が司法書士・税理士もワンストップで紹介してくれる」という体制が整っているかどうかを、会社選びの基準の一つにすることをお勧めします。
共有名義不動産売却にかかる価格・税金・費用の注意点
売却価格が決まっても、税金や諸費用を差し引いた「手取り額」は思いのほか少なくなることがあります。共有名義の場合は複数人で分配するため、各自の取り分を事前に試算しておくことが、共有者間のトラブル防止にもつながります。
売却価格の決まり方
売却価格は、立地・築年数・建物状態・周辺の取引事例などを元に不動産会社が査定します。共有名義の場合、各共有者の「希望売却価格」に差が出やすいため、複数社の査定結果をもとに現実的な価格で合意形成することが重要です。高すぎる価格設定は売却期間の長期化を招き、最終的に値下げせざるを得なくなるケースが多くあります。
また、住宅ローンが残っている場合は、売却価格がローン残高を上回ることが必要です。残高を下回るいわゆる「オーバーローン」状態では、原則として売却できません。事前に金融機関に残高を確認し、売却後に完済できるかどうかを把握しておきましょう。
持分売却で価格が下がる理由
先ほども述べたように持分のみを売却する場合、市場価格の3〜5割程度になるのが一般的です。完全な所有権でないため投資対象としての魅力が低く、流動性も低いことが主な理由です。買取業者も交渉・訴訟のリスクを見込んで安く買い取るため、持分売却は資産価値を大きく毀損します。
具体例を挙げると、不動産全体の価値が3,000万円で自分の持分が3分の1(理論値1,000万円)の場合でも、実際の買取額は300〜500万円程度にとどまるケースが多く見られます。全体売却で得られる金額との差は非常に大きく、持分売却を安易に選択することは経済的な損失につながります。
譲渡所得税・その他費用
不動産売却で利益が出た場合、譲渡所得税(所得税+住民税)が課税されます。
- 短期譲渡所得(所有5年以下):約39%
- 長期譲渡所得(所有5年超):約20%
マイホームの場合は3,000万円特別控除など特例が適用できる可能性があります。その他の主な費用は以下の通りです。
| 費用 | 目安 |
|---|---|
| 仲介手数料 | 売却価格×3%+6万円(+消費税) |
| 印紙税 | 売却価格によって異なる(3,000万円の場合:1万円) |
| 司法書士報酬 | 3〜10万円程度 |
| 測量費用(土地の場合) | 30〜100万円程度 |
条件に応じてこのような特例を適応させ、税金や諸費用を差し引いた「手取り額」を事前に試算し、共有者全員で共有しておくことが重要です。
共有名義不動産売却で起こりやすいトラブル3パターン

共有名義の売却では、手続き上の問題だけでなく、人間関係や認識のズレがトラブルの引き金になるケースが多くあります。よくある3つのパターンを把握し、事前に対策を取っておくことが円滑な売却への近道です。
パターン①感情的な対立
共有者間の感情的な対立が、売却最大の障壁になるケースが少なくありません。親の介護負担の不公平感・過去の金銭トラブル・思い出への執着など、不動産以外の問題が売却交渉に持ち込まれることがあります。
特に相続により共有となった場合は、長年積み重なった感情が一気に噴出することがあります。「自分だけ親の介護をしたのに、なぜ均等に分けるのか」「兄は生前贈与をもらっていたはずだ」といった主張が出てくると、不動産の話し合いが本来の問題とは無関係な方向へ進んでしまいます。
このような感情的な対立を生まない対策としては、弁護士や不動産会社など第三者を早めに介在させ、感情論ではなく事実・数字ベースで話し合いを進めることが有効です。また、合意事項はその都度書面に残し、積み重ねていくことで信頼関係を構築しながら進めることが大切です。
パターン②後から生じる認識のズレ
「査定価格で必ず売れる」「仲介手数料は相手が払う」など、共有者間で認識がずれたまま進んでしまい、後でトラブルになるケースがあります。重要な事項は共有者全員が同じ説明を受け、書面で合意を残しておくことが必須です。
特に注意が必要なのが、税金に関する認識のズレです。売却により譲渡所得が発生した場合、翌年に確定申告を行い所得税・住民税を納付する必要があります。この点を認識していない共有者が売却代金を全て使ってしまい、後で税金を払えないというケースも実際に起きています。売却前に税理士に相談し、各共有者がいくらの税金を納付する必要があるかを事前に試算しておくことが重要です。
また、「持分割合通りに代金を分配した後、それぞれが自分で税金を申告・納税する」という認識を共有者全員で持っておくことも大切です。
パターン③手続き遅延・契約トラブル
その他にも手続き・書類による契約によるトラブルもしばしば発生します。
- 書類の準備が間に合わず、契約が遅延する
- 相続登記が未完了のまま手続きを進めようとして頓挫する
- 契約直前に共有者の一人が翻意して違約金問題に発展する
これらを防ぐには、早めの書類準備・定期的な連絡・専門家への早期相談が有効です。
まとめ|共有名義の不動産売却は早めの判断と専門家相談がマスト

共有名義不動産の売却方法は、共有者の人数・関係性・不動産の種類など状況によって異なります。
- 全員が合意している:できる限り全体売却を目指す
- 一部が反対:協議・弁護士介入・共有物分割請求を検討
- 連絡が取れない:不在者財産管理人の選任を検討
- 土地で物理的に分割できる:分筆による共有解消を検討
- 早急に現金化が必要:持分売却も選択肢だが、デメリットを十分理解した上で判断
一方、専門家に相談せず自己判断で進めると、契約が無効になる・特例措置を適用し忘れて税負担が増える・持分売却により資産価値を毀損する・親族関係が修復不可能なほど悪化するといったリスクが生じます。
時間が経過するほど、共有者は増え・不動産は老朽化し・手続きは複雑になります。「まだ大丈夫」と先送りせず、まずは不動産会社に査定を依頼し、「売れるのかどうか」「いくらで売れるのか」という現状把握から始めることをお勧めします。
共有名義不動産の売却でお悩みの場合は、ぜひお気軽にご相談ください。