「本当はすぐにでも解体したいのに、解体費用が高額で払えない」と、相続した実家の扱いに困って頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。
管理が行き届いていない空き家は、倒壊の危険や治安・景観の悪化を招き、深刻な社会問題となっています。中には「特定空き家」に指定され、固定資産税が大幅に増えるケースも少なくありません。
この記事では、解体費用が払えない時に”やってはいけないNG行動”を解説します。さらに、補助金の活用や家の売却など、賢く問題を解決するための具体的な方法も紹介しています。この記事を読めば、解体費用が払えなくても問題を解決する方法が見つかり、今取るべき行動が明確になるでしょう。
目次
空き家を放置することで生じる具体的なリスク
解体費用が払えないからといって空き家を放置すると、時間の経過とともにさまざまなリスクが顕在化していきます。まずは、放置によって生じる具体的なリスクを理解しておくことが重要です。
固定資産税が最大6倍に跳ね上がる可能性
通常、住宅が建っている土地には「住宅用地の特例」が適用され、固定資産税が軽減されています。200平方メートル以下の部分については固定資産税評価額の6分の1、都市計画税は3分の1に軽減されるため、大きな節税効果があります。
しかし、管理が不十分な空き家が「特定空き家」に指定されると、この優遇措置が解除されてしまいます。その結果、固定資産税が最大で6倍、都市計画税が最大で3倍に増加することになります。
例えば、年間の固定資産税が10万円だった場合、特定空き家に指定されると年間60万円にまで跳ね上がる計算になります。これは解体費用の支払いが困難な状況において、さらに大きな経済的負担となります。
損害賠償責任を負うリスク
空き家が老朽化し、外壁の落下や屋根瓦の飛散、倒壊などによって通行人や近隣住民、隣接する建物に被害を与えた場合、所有者は民法上の工作物責任(民法717条)に基づき、損害賠償責任を負うことになります。
この責任は非常に重く、所有者が管理を怠っていなかったことを証明できない限り、原則として責任を免れることはできません。実際に、空き家の倒壊によって数千万円単位の賠償を命じられた事例も存在します。
行政代執行による強制解体と費用請求
「空家等対策の推進に関する特別措置法」により、自治体は著しく保安上危険な状態にある空き家に対して、改善命令や行政代執行を行う権限を持っています。
行政代執行が行われた場合、解体費用は所有者に請求されます。しかも、行政代執行による解体費用は、一般的な業者に依頼するよりも高額になることが多く、さらに督促や延滞金が加算される可能性もあります。支払いに応じない場合は、財産の差し押さえなどの強制執行が行われることもあります。
防犯・衛生上の問題
管理されていない空き家は、不法侵入や放火、不法投棄の対象になりやすく、近隣住民とのトラブルの原因となります。また、害虫や害獣の発生源となり、衛生環境を悪化させることもあります。
これらの問題が発生すると、近隣住民から苦情が寄せられ、精神的な負担も大きくなります。場合によっては、近隣住民から損害賠償を請求されることもあり得ます。
空き家を所有している場合にやってはいけない3つのNG行動

家の解体費用が払えないと悩んでいるとき、焦りからつい取ってしまいがちな行動があります。ここでは、解体費用が払えない空き家で、やってはいけない3つのNG行動を紹介します。
空き家を放置する
解体費用が払えないからといって、空き家を何もせずに放置することは避けましょう。
何の対策もせずに空き家を放置すると、自治体から「特定空き家」に指定される恐れがあります。「特定空き家」とは、倒壊の危険があったり、衛生上・景観上の問題があったりして、放置することが不適切と判断された空き家のことです。特定空き家の指定を受けると、土地の固定資産税が最大6倍に跳ね上がる可能性があります。これは、建物が建っていることで受けられていた税金の優遇措置が適用されなくなるためです。
参考:国土交通省「固定資産税等の住宅用地特例に係る空き家対策上の措置」
さらに、自治体からの改善命令に従わない場合、行政が所有者に代わって強制的に家を解体する「行政代執行」がおこなわれることもあります。その際にかかった数百万円もの解体費用は、全額所有者に請求されます。
このように、空き家の放置は金銭的なリスクを高める恐れがあるため、問題が深刻化する前に早めの対策を講じましょう。
解体ありきで自己判断してしまう
「空き家=解体しなければならない」と思い込み、他の選択肢を検討しないまま話を進めてしまうのも注意が必要です。
実際には、解体せずに売却できるケースや、活用することで解体費用をかけずに済む方法もあります。自己判断で解体を決めてしまうと、本来不要だった費用を負担することになりかねません。
特に、立地条件が良い場所や、建物に一定の価値が残っている場合は、解体せずに売却した方が経済的に有利になることも少なくありません。解体費用をかけて更地にしても、必ずしも高く売れるとは限らないのです。
個人で解体業者を探して依頼する
個人で解体業者を探して直接依頼すると、思わぬトラブルにつながるため、慎重に検討しなければなりません。解体費用を払えないという焦りから、「格安」をうたう業者に安易に飛びつくと、かえって損をする恐れがあるのです。
例えば、見積金額は他社より低いものの、いざ解体工事が始まると、あらゆる理由をつけて追加費用を次々と請求する解体業者が存在します。また、解体で出た木材やコンクリートガラなどを山中に不法投棄して、廃棄物処理費用を軽減している悪質な業者もあります。この行為は違法行為であるため、後から依頼者も責任を問われる可能性があるのです。
このようなトラブルを避けるためには、必ず複数の業者から相見積もりを取りましょう。複数の見積もりを比較すれば、おおよその費用相場がわかり、不当な請求を見抜くことができます。また、単純な価格の比較だけでなく、工事内容の詳細や担当者の対応まで含めて総合的に判断し、信頼できる業者を選ぶことが重要です。
専門家への相談を先延ばしにする
専門家への相談を先延ばしにした上で自己判断であれこれ判断してしまうと、問題解決の選択肢を狭めることにつながります。空き家対策は、法律や税金、不動産の知識が複雑に絡み合うため、個人の判断だけで最適な解決策を見つけるのは難しいのです。「費用がないから解体できない」と一人で悩み続けていても、事態は好転しません。
例えば、空き家の売却を考えるにしても、解体して更地で売るべきか、古い家が建ったままの「古家付き土地」として売るべきかは、立地や建物の状態によってどちらが得かは異なります。また、使えるとは知らなかった補助金制度や、所有者にとって有利な売却方法など、専門家でなければ持ち合わせていない解決策も多くあるでしょう。
不動産会社や税理士などの専門家は、所有者の状況を客観的に分析し、解体・売却・賃貸など、個々のケースに合わせてさまざまな可能性の中から最善の案を提案してくれます。問題を一人で抱え込まず、まずは専門家の知見を頼ることが解決への近道です。
解体費用の相場と内訳を正しく理解する
解体費が払えないと感じる前に、まずは解体費用の相場と内訳を正しく理解しておくことが重要です。目安がわかることで不安も取り除かれ、実際に見積もりを取る際の重要な指標になります。
解体費用の相場
建物の解体費用は、構造や広さ、立地条件によって大きく異なります。一般的な相場は以下の通りです。
| 空き家の種類 | 解体費用の目安(一例) |
|---|---|
| 木造住宅 | 坪単価:3万円〜5万円程度 30坪の木造住宅:90万円〜150万円程度 |
| 鉄骨造住宅 | 坪単価:4万円〜6万円程度 30坪の鉄骨造住宅:120万円〜180万円程度 |
| 鉄筋コンクリート造 | 坪単価:6万円〜8万円程度 30坪のRC造住宅:180万円〜240万円程度 |
ただし、これはあくまで目安であり、実際の費用は次のような要因によって変動します。
解体費用を左右する要因
1)立地条件
重機が入れない狭小地や道路付けが悪い土地では、手作業が増えるため費用が高くなります。都市部では残材の運搬距離や処分場の利用料が高くなる傾向があります
2)建物の状態
アスベスト含有建材がある場合、除去費用として別途50万円〜200万円程度が必要になることがあります。その他、地下室や浄化槽がある場合も追加費用が発生します。
3)付帯工事の有無
庭木の伐採、ブロック塀の撤去、井戸の埋め戻しなども費用に含まれます。隣地との境界が不明確な場合、測量費用が別途必要になることもありますの注意が必要です。
4)時期や業者の繁閑
年度末や相続税の申告期限前などは業者が繁忙期となり、費用が高くなる傾向があります。
賢く解決!解体費用を捻出するための3つの対処法

実際に試算した結果、空き家の解体費用が払えなくても諦める必要はありません。視点を変えれば、負担を減らしながら解体費用を捻出する方法が見つかります。ここでは、賢く解体費用を捻出するための具体的な3つの対処法を紹介します。
対処法①国や自治体の補助金制度を活用する
まずは、国や自治体の補助金制度を活用することを検討してみましょう。国や自治体の補助金制度は、倒壊の危険がある老朽化した空き家を減らし、地域の安全と景観を守る目的で設けられています。補助金制度が利用できれば、自己資金が少なくても解体工事に着手できる可能性があります。
制度の名称や内容は自治体によってさまざまですが、代表的なものに杉並区の「老朽危険家屋解体撤去補助金」や京都市の「京都市空き家等の活用・流通補助金」などがあります。杉並区の「老朽危険家屋解体撤去補助金」の補助金額は「解体工事費の80%」か「150万円」のいずれか低い金額です。一方、京都市の「京都市空き家等の活用・流通補助金」の補助金額は、解体工事費の1/3(上限60万円)です。
参考:杉並区「老朽危険空家除却費用の助成制度」
参考:京都市「【令和7年度】京都市空き家等の活用・流通補助金について」
手続きの一般的な流れとしては、まず自治体の担当窓口へ事前相談をするところから始まります。そこで制度の対象になるかを確認後、解体業者から見積もりを取得し申請書類を提出、解体工事完了後に補助金を受け取る流れです。
注意点として、必ず工事契約前に申請し、交付が決定してから工事を始めるようにしましょう。また、予算がなくなり次第、受付を終了する自治体も多いため、早めに情報収集を始め、計画的に手続きを進めることが重要です。
対処法②空き家を売却する(古家付き売却)
空き家を解体せずに売却すれば、解体費用をかけずに空き家問題を解決できます。特に、家の立地が良い場合は、「古家付き土地」として買い手が見つかる可能性があります。
売却する最大のメリットは、解体費用を負担することなく家を手放せる点です。売却によってまとまった資金が得られるだけでなく、固定資産税の支払いや、建物の維持管理といった精神的・経済的な負担からも解放されるでしょう。
一方で、デメリットも理解しておく必要があります。新築用地として検討している購入希望者は、購入後に解体することを前提としているため、売却価格が更地の場合よりも安くなることがあります。また、建物の状態が悪すぎると、土地自体の印象も悪くなり、買い手が見つかりにくいケースも考えられるでしょう。
もし、すぐにでも現金化したい、あるいは買い手が見つからずに困っている場合は、不動産会社に直接物件を買い取ってもらう「買取」という売却方法があります。買取の場合、相場よりも売却価格が安くなりますが、スピーディーに現金化でき、ケースによっては室内の残置物も引き取ってもらえることがあります。さらに、仲介手数料がかからないのも魅力です。
このように、それぞれにメリット・デメリットがあるため、まずは信頼できる不動産会社に査定を依頼しましょう。そのうえで、物件がどのくらいの価格で売れそうか、また買い取りの場合はいくらになるのかを提案してもらうのがおすすめです。
対処法③不動産会社に相談し、適切なアドバイスをもらう
空き家問題を解決するためには、信頼できる不動産会社に相談し、専門的なアドバイスをもらいましょう。
不動産会社を選ぶ際のポイントは、空き家の売買や解体に関する実績が豊富かどうかです。また、地域に根ざした不動産会社は、その土地の市場価値や買い手の需要を熟知しているため、的確な提案が期待できます。会社のホームページで過去の取引事例を確認したり、複数の会社に問い合わせて担当者の対応を比較したりして、安心して任せられる不動産会社を見つけましょう。
また、空き家問題に強い不動産会社は、単に物件を仲介するだけではなく、解体業者や税理士、司法書士といった各分野の専門家とネットワークを築いています。例えば、売却によって利益が出た場合の税金対策については税理士に、相続した不動産の名義変更がまだ済んでいない場合は司法書士に、というように所有者の状況に応じて最適な専門家を紹介してくれます。
このように、空き家問題に強い不動産会社に相談すれば、個別に専門家を探す手間が省けるだけでなく、専門家同士が連携して対応してくれるため、手続きがスムーズに進むでしょう。
対処法④空き家バンク・賃貸活用という選択肢
解体せずに問題を解決できるケースとして、「空き家バンクの活用」と「賃貸活用」という選択肢もあるでしょう。
空き家バンクの活用
自治体が運営する空き家バンクでは、移住希望者や地域活性化を目的とした利用者に物件を紹介しています。売却価格は高くならないこともありますが、解体費をかけずに手放せる可能性があります。
空き家バンクを通じた取引では、自治体が仲介役となるため、手続きがスムーズに進むこともあります。また、移住支援制度と組み合わせることで、買主にとってもメリットがあるため、成約しやすくなることもあります。
賃貸・活用
建物の状態によっては、簡易的な修繕のみで賃貸として活用したり、倉庫・事務所として利用する方法も考えられます。家賃収入を得ながら、将来的な売却や解体を検討することも可能です。
最近では、以下のような活用方法も注目されています。
- シェアハウスやゲストハウスとしての活用
- アトリエや工房としての貸し出し
- 地域コミュニティスペースとしての活用
- リモートワークスペースとしての活用
ただし、賃貸活用を行う場合は、建物の安全性を確保することが大前提となります。必要に応じて耐震診断や修繕を行い、入居者の安全を守ることが所有者の責任です。
【重要】解体・売却・活用は「順番」で考えることが重要
空き家問題を解決する際は、「解体するかどうか」から考えるのではなく、順番を意識することが大切です。
- 現状のまま売却できる可能性があるか
- 活用(賃貸・空き家バンク等)が現実的か
- どうしても必要な場合のみ解体を検討する
この順番を誤ると、本来かからなくてよい費用を先に支払ってしまうことがあります。特に解体は後戻りができないため、慎重な判断が求められます。そんな時こそ専門家に相談をし、第三者の視点から「この空き家をどうするのが最適か」を客観的にアドバイスをもらうことをおすすめします。
まとめ|解体費が払えない空き家は「一人で抱え込まない」ことが解決への近道
この記事では、家の解体費用が払えないと悩んでいる際にやってはいけない行動と、賢く問題を解決するための方法を紹介しました。解体費用が払えないからといって、空き家を放置したり、個人で解体業者を探して依頼したりしても、根本的な解決にはなりません。
しかし、視点を変えれば解決の道は必ず見つかります。何から手をつければよいか分からない時こそ、まずは専門家へ相談することが解決への第一歩です。
そして忘れてはいけないことは、空き家問題は、時間が経つほど選択肢が狭まり、費用負担も大きくなる傾向があるということです。今できることから始めることで、将来的な負担を最小限に抑えることができます。まずは現状を整理し、専門家と一緒に最善の道を探していきましょう。