不動産価格の高騰が続く現在、「自分のマンションを今売ったら儲かるかもしれない」と考えている方も多いのではないでしょうか。実際に、購入時より高く売却し、利益を得る人は増えています。しかし、ただマンションを売るだけでは儲かったとは言えません。本当の意味での「儲かった」とは、売却価格から税金や諸費用を差し引いた「手取り額」を十分に確保することです。
このコラムでは、将来の価値を見据えた購入時の物件選びや市場の波に乗る売却戦略、そして手取り額を確保するための税金対策まで、成功者が実践する具体的なノウハウを紹介します。この記事を参考に、納得のいくマンション売却を実現しましょう。
目次
【儲けの土台】「購入時」から勝負は始まっている!資産価値を見抜くプロの視点

マンション売却で儲けられるかどうかは、売却活動だけでなく、どの物件を購入したかに左右されます。購入時に将来的に価値が落ちにくい物件を選べていれば、売却で利益を得られる可能性は高まるでしょう。ここでは、購入段階で資産価値の高いマンションを見抜くためのコツをプロの視点で解説します。
価格が落ちにくい「立地」の鉄則
マンション売却で儲けるためには、「価格が落ちにくい立地のマンション」を選びましょう。価格が落ちにくい立地の条件は、駅からの距離と将来性が重要です。
最寄り駅から徒歩10分圏内、特に5分以内の物件は需要が安定しており、資産価値が維持されやすい傾向にあります。ただし、すでに人気のエリアは価格が高騰しているため、あえて隣駅や少し離れたエリアを選ぶ「逆張り」戦略も有効です。
その際は、将来的に駅前で再開発計画があるか、大型商業施設や公共施設の建設予定はないかなど、街のポテンシャルを読み解いてみてください。行政が発表する都市計画などを確認し、将来性を見越してエリアを選定すれば、将来的に売却益を確保することができるでしょう。
物件の「稀少性」と「管理体制」をチェックする
物件の稀少性とマンションの管理体制も資産価値に影響します。
例えばタワーマンションの場合、眺望の良い高層階の角部屋や、日当たりの良い南向きの部屋は人気が高く、稀少価値があるため高値での売却が期待できます。一方で、同じマンション内でも条件があまり良くない希少性が低い部屋は価格が伸び悩むことがあります。
また、マンションの管理体制のチェックも重要です。築年数が新しくても、管理組合が適切に機能していなければ建物の劣化は早く進みます。購入前には必ず「長期修繕計画」や「修繕積立金」の状況を確認しましょう。計画的な修繕が行われ、修繕積立金が十分に確保されているマンションは、将来にわたって資産価値が保たれやすくなります。
築浅 vs 築10年超:高く売れるタイミングの検討
一般的に、マンションの価格は築年数が経過するほど下落します。特に新築から築10年までは価格が下がりやすい時期ですが、築10年を超えると価格の下落は緩やかになる傾向にあります。
そのため、短期的な売却益を狙うのでなければ、価格が安定した築10年超の物件を購入し、市場相場が良いタイミングで売却する戦略がおすすめです。一方で、築浅物件は最新の設備やデザインが魅力で、高い需要が見込めるため、エリアによっては好条件で売れる可能性があるでしょう。
将来のライフプランに合わせて、どちらの戦略が自分に合っているかを検討してみてください。
購入時のコストを極限まで抑える「交渉術」
将来の売却益を確保する上で、購入時のコストを抑えることも重要なポイントです。物件価格だけでなく、仲介手数料や諸費用についても交渉の余地がないかを検討しましょう。例えば、売主が早く売却したい事情を抱えている場合などは、価格交渉がしやすくなることもあります。
また、不動産取得税や登記費用などの諸費用も意外と高額です。事前にどれくらいの費用がかかるかシミュレーションしておけば、資金計画に余裕が生まれ、有利な条件で交渉を進めやすくなるでしょう。
【高値売却の戦略】「売り時」と「価格設定」で利益を最大化する

良い物件を購入したら、次は「いつ、いくらで、誰に売るか」という売却戦略をしっかり立てましょう。ここでは、マンションを高値で売却する具体的な戦略を紹介します。
市場動向と税制を味方につける「ベストな売り時」
マンションのベストな売り時は、「市場動向」と「税制」の両面から見極める必要があります。現在、新築マンション価格の高騰や建築コストの上昇を背景に、中古マンション市場に需要が流れているため、価格は上昇傾向にあります。この市場トレンドは中古マンション売却の追い風と言えるでしょう。
また、不動産取引が活発になる2月〜3月は、新生活に向けて家を探す人が増えるため、高値で売却しやすい時期です。一方で、8月や12月は需要が鈍くなりやすい時期です。
税制面では、売却するマンションの所有期間が5年を超えると税率が下がり、手元に残る利益が増えます。所有期間が10年を超えると「10年超所有軽減税率の特例」が適用され、節税効果がより高まります。
「不動産会社選び」が儲けを左右する
不動産会社選びも、マンション売却の成否を大きく左右します。不動産会社を選ぶ際は、提示された査定額の高さだけで判断しないことを意識しましょう。相場からかけ離れた高すぎる査定額は、売主の期待を煽って媒介契約を結ぶための戦略である恐れがあります。その不動産会社のホームページで、自分のマンションと同じエリアの物件の売却実績が豊富かを確認しましょう。
さらに、特定のエリアやタワーマンション、投資用物件など、不動産会社ごとに得意分野は異なります。複数の会社に査定を依頼し、査定額の根拠を具体的に説明できるか、マンションの強みを的確に理解しているかを見極めることが、信頼できる不動産会社を見つけるためのコツです。
専任媒介契約で成功するために確認すべき事項
マンションを高値で売却するコツとして、「専任媒介契約で売り出す」ということも挙げられます。特定の1社に売却を任せる専任媒介契約は、不動産会社が積極的に販売活動をしてくれる点がメリットです。しかし、その効果を最大限に引き出すためには、契約前に確認するべきポイントがあります。
まず、広告活動の具体的な計画を確認しましょう。どの不動産ポータルサイトに掲載するのか、チラシはどの範囲に配布するのかなど、具体的な販売戦略を聞くことが重要です。また、売却活動の進捗を報告する頻度や方法(レインズへの登録状況、問い合わせ件数など)も事前に取り決めておきましょう。
上記を明確にすることで、不動産会社との認識のズレを防ぎ、好条件での売却が目指せるでしょう。
戦略的な価格設定と値下げ交渉への対応
戦略的な価格設定も、マンションを高値で売却するポイントです。
まずは、不動産情報サイトなどで周辺の類似物件の売り出し価格や成約価格を徹底的に調査し、データに基づいた根拠ある売却価格を設定しましょう。その上で、購入希望者の心理を考慮し、「3,000万円」ではなく「2,980万円」のように端数を使った価格設定も検討してみてください。
内覧者が現れない場合は値下げも検討しなければなりませんが、最初から大幅な値下げは避けましょう。購入希望者からの価格交渉に備え、最終的な着地点をあらかじめ決めておき、10万円単位の小刻みな調整で対応すれば、手取り額が大幅に減ることを防げます。
【魅力を高める実践術】内覧と広告で「買いたい」と思わせる

適切な売り時と価格を設定できれば、次はいかに物件の魅力を伝え、購入希望者に「買いたい」と思わせるかを考えましょう。ここからは、内覧と広告で物件の価値を最大限に高めるための具体的な戦略を紹介します。
費用対効果を最大化する物件の「磨き方」
費用対効果を最大化する対策として、室内の清掃に力を入れましょう。特に、清潔感が問われる水回り(キッチン、浴室、トイレ)と、家の第一印象を決める玄関は重点的に清掃しなければなりません。
また、費用をかけた大規模なリフォームは、リフォーム代を売却価格に上乗せできず回収できない場合が多いため、基本的に不要です。ただし、壁紙の破れや設備の明らかな故障など、購入希望者にマイナス印象を与える部分はあらかじめ修繕しておきましょう。
また、生活感を消しモデルルームのような空間を演出する「ホームステージング」もおすすめです。家具や小物をレンタルしてプロに演出を依頼することで、物件の魅力を引き出し、購入意欲を高める効果が期待できます。
内覧を成功に導く具体的な準備と対応
内覧を成功に導くためには、物件のアピールポイントを事前に言語化しておきましょう。例えば、「リビングは南向きで日当たりが良く、冬でも暖かいです」「バルコニーからの眺望が良く、夜景が綺麗です」など、競合物件にはない独自の魅力を具体的に伝えられるように準備しておくのがおすすめです。
加えて、壁の傷や設備の不具合などのマイナス点を隠さず正直に伝えることで、購入希望者は安心して購入を検討できます。また、内覧者の中にはスーパーや学校までの距離、近隣の騒音など、周辺環境を気にする人もいるでしょう。その際もメリットだけでなく、デメリットも正直に伝えることで、購入希望者へ誠実な印象を与えられるため、好条件での売却につながります。
効果的な広告戦略と「売れない」時の見直しポイント
効果的に広告を打ち出すためには、物件の魅力を最大限に引き出す写真と紹介文を掲載することを心がけましょう。プロのカメラマンに撮影を依頼したり、物件の強みが一目でわかるキャッチコピーを考えたりすることで、広告の訴求力が高まります。
中々反響がない場合は、掲載しているポータルサイトを変更する、SNS広告など新しい媒体を試す、などを担当者に提案してみてください。また、購入希望者は同じマンション内で他にも売り出し中の物件があると、それぞれを比較検討します。価格や条件面で劣る場合は、売り出しのタイミングをずらすなど、競合を避ける工夫も考えてみましょう。
【手残りを守る】売却益にかかる税金と知っておくべき節税特例
マンション売却で利益が出た場合、その利益(譲渡所得)に対して税金がかかります。その際、税金の仕組みを理解し、適用できる特例を活用すれば、手元に残る金額を増やすことができます。ここでは、売却益にかかる税金の基本と、節税のための特例を紹介します。
売却益にかかる税金の種類と計算構造
マンションの売却で得た利益(譲渡所得)には、所得税・住民税・復興特別所得税がかかります。これらの税額は、売却価格から物件の購入費用や売却にかかった経費を差し引いた譲渡所得に、所定の税率をかけて計算します。
譲渡所得の計算式は以下のとおりです。
譲渡所得にかけられる税率はマンションの所有期間によって異なり、売却した年の1月1日時点で所有期間が5年以下か、5年超かで判断されます。詳しい税率は次の表を参考にしてください。
| 所得区分 | 所有期間 | 税率 | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 短期譲渡所得 | 所有期間5年以下 | 39.63% | 所得税:30% 住民税:9% 復興特別所得税:0.63% |
| 長期譲渡所得 | 所有期間5年超 | 20.315% | 所得税:15% 住民税:5% 復興特別所得税:0.315% |
所有期間が5年を超えるだけで税負担が大きく軽減されるため、売却タイミングを検討する際の重要な判断材料となるでしょう。
利益が出た場合に使える主な節税特例
利益が出た際に使える節税特例として代表的なのが「3,000万円特別控除」です。この特別控除は、マイホームを売却した場合に譲渡所得から最高3,000万円を控除できる制度で、多くのケースで税負担をゼロ、あるいは大幅に軽減できます。3,000万円特別控除を受けるための主な条件は次のとおりです。
- 売却するマンションがマイホームであること
- 買主が親子や夫婦など「特別の関係がある人」でないこと
- 売った年、その前年および前々年にマイホームの買換えやマイホームの交換の特例の適用を受けていないこと
参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例」
ケースによっては他にも要件があるため、3,000万円特別控除を利用できるかどうかは、不動産会社の担当者や税理士に相談するのがおすすめです。さらに、所有期間が10年を超えるマイホームを売却し、3,000万円特別控除を適用してもなお利益が残る場合は、「10年超所有軽減税率の特例」を併用できます。この特例を使うと、6,000万円までの利益部分に対する税率が14.21%にまで引き下げられます。
上記の特例は自動的に適用されるわけではありません。特別控除や軽減税率の特例を利用するには、売却した翌年に必ず確定申告をする必要があるため、忘れないようにしましょう。
まとめ
ここまで、マンション売却で利益を出すための方法を解説してきました。
マンション売却の成功は、将来の価値を見据えた「購入時の戦略」と、市場を見極めた「売却時の具体的な行動」という2つの積み重ねで決まると言っても過言ではありません。購入時にマンションの立地や管理体制を見極め、売却時に市場動向や税制を最大限に活用すれば、売却時の手取り額を増やすことができます。
売却を考え始めたら、まずは自分のマンションの資産価値を把握する必要があります。そのためには、複数の不動産会社へ査定を依頼し、信頼できるパートナーを見つけることから始めてみましょう。