目次
はじめに|なぜ今「ホテル投資」が注目されているのか
不動産投資と聞くと、賃貸マンションやアパート経営を思い浮かべる方が多いかもしれません。しかし近年、ホテル投資が新たな不動産投資の選択肢として注目を集めています。その背景には、インバウンド需要の回復、国内旅行需要の底堅さ、そして他の不動産投資と比較して高い利回りが期待できる点があります。
一方で、ホテル投資は「儲かりそう」というイメージだけで判断すると失敗しやすい投資でもあります。本コラムでは、ホテル投資の基本的な仕組みから利回りの考え方、収益性を高めるポイント、そして見落としがちなリスクまでを体系的に解説します。
ホテル投資とは?不動産投資としての基本構造
ホテル投資とは、宿泊施設として利用される不動産(建物・土地)を取得し、宿泊事業として運用することで収益を得る投資手法です。
マンション投資やアパート経営と同じ「不動産投資」に分類されますが、最大の違いは賃料収入ではなく「宿泊売上」を源泉とする事業性の高い投資である点にあります。
一般的な賃貸不動産投資との違い
一般的な不動産投資とホテル投資の違いを簡単に表にまとめています。
| 項目 | 賃貸住宅投資 | ホテル投資 |
|---|---|---|
| 収益源 | 毎月の賃料 | 宿泊売上(稼働率×客室単価) |
| 収益の安定性 | 比較的安定 | 市場・需要により変動 |
| 運営関与 | 低い | 高い(方式により異なる) |
| 利回り | 低い | 高い(方式により異なる) |
| 投資性質 | 資産運用寄り | 事業投資寄り |
このように、ホテル投資は「不動産+宿泊事業」という二重の性質を持っている点が最大の特徴です。
ホテル投資の対象となる主な宿泊施設の種類
ホテル投資と一口に言っても、対象となる施設の種類によって収益性やリスクは大きく異なります。立地条件や需要の性質、運営コストの構造が異なるため、自身の投資目的に合った施設選びが重要です。
① ビジネスホテル
出張需要を軸に安定収益を狙う都市型宿泊施設で、初心者にも検討しやすい投資先です。
- 都市部・駅近立地が中心
- 平日の稼働率が高く、需要が安定
- 客室単価は低めだが、年間稼働率が高い
- 比較的安定型のホテル投資
② リゾートホテル
観光需要の波を捉えることで高収益を実現できる一方、季節変動リスクを伴う施設です。
- 観光地・温泉地・海沿いなど
- 客室単価は高いが、季節変動が大きい
- 天候・観光トレンドの影響を受けやすい
- 高収益だがリスクも大きい
③ 旅館
日本文化の体験価値を提供し、インバウンド市場で強みを発揮する伝統型宿泊施設です。
- 和風・温泉・体験型宿泊が中心
- インバウンド需要と相性が良い
- 人件費・運営コストが高くなりやすい
- 運営力が収益を左右する施設
④ 簡易宿所・民泊対応施設
少額資金で始められる小規模宿泊事業ですが、法規制への対応が成功の鍵を握ります。
- 小規模・低コストで参入可能
- 法規制(旅館業法・民泊新法)の理解が必須
- エリアによって収益性に大きな差
- 高利回りだが制度リスクあり
このように、ホテル投資は施設の種類によって収益モデル・利回り水準・リスク特性が大きく異なる投資手法です。安定した収益を重視するのであればビジネスホテル、高い収益性を狙うのであればリゾートホテルや旅館、小規模かつ高利回りを求める場合は簡易宿所や民泊といったように、投資目的とリスク許容度に応じた選択が不可欠となります。
単に「利回りが高いかどうか」だけで判断するのではなく、市場環境・運営難易度・長期的な需要を踏まえて施設タイプを見極めることが、ホテル投資で安定した収益を実現するための重要なポイントです。
ホテル投資における3つの運用方式

ホテル投資では、「誰がどこまで経営・運営を担うか」 によって収益構造とリスクが大きく変わります。ここでは下記の3つの方式について紹介していきます。
①一括賃貸方式(マスターリース)
②運営委託方式(オペレーター委託)
③直営方式(自主管理)
① 一括賃貸方式(マスターリース)
オーナーが保有するホテル物件を、ホテル運営会社に一括で貸し出し、毎月固定または変動賃料を受け取る方式です。収益構造としては、一番わかりやすく「収益=賃料収入」となります。また、稼働率や売上の変動リスクは運営会社側にお任せすることができ、もっと不動産投資に近いと言えるでしょう。
メリット
- 収益が安定しやすい
- 経営・運営に関与する必要がない
- 投資初心者でも取り組みやすい
デメリット
- 利回りは比較的低め
- 運営会社の信用力に依存
- 売上が好調でも収益が限定される
「賃貸不動産に近い感覚」でホテル投資をしたい方におすすめな方式です。
② 運営委託方式(オペレーター委託)
運営委託方式(オペレーター委託)はオーナーが経営主体となり、日々のホテル運営を専門の運営会社に委託する方式です。収益構造としては「収益=宿泊売上 − 運営コスト − 委託費」となり、稼働率・単価が直接収益に影響していきます。経営を担う形になるため、うまく運用すれば利回りや収益性が高くなりやすい形式となります。
メリット
- 利回り・収益性が高くなりやすい
- 運営ノウハウを活用できる
- 売上成長の恩恵を受けやすい
デメリット
- 収益変動リスクがある
- 経営判断はオーナー側に求められる
- 数字管理・事業理解が必須
この方式は「収益性を重視する中〜上級者向け」と言えるでしょう。
③ 直営方式(自主管理)
最後に直営方式(自主管理)を紹介しますが、こちらはオーナー自身が経営・運営のすべてを行う方式です。収益構造は、「収益=宿泊売上 − 全コスト」となり、成功すれば最も高い利回りが期待できる方法でもあります。運営から経営管理まで全て自分もしくは自社で実施したい場合にはこちらの方式を取ることが一般的です。
メリット
- 利益率が最も高い
- ブランド構築や独自戦略が可能
デメリット
- 経営・人材・集客の負担が非常に大きい
- 失敗時の損失リスクも最大
- 本業としての覚悟が必要
全てはオーナーの責任となるため「事業としてホテル経営を行う」という意識を持って取り組む必要があります。
運用方式によって変わる「投資の性質」
ホテル投資は、先ほど紹介した運用方式によって以下のように投資の性質が変わります。
- 一括賃貸方式:不動産投資寄り
- 運営委託方式:不動産×事業のハイブリッド
- 直営方式:完全な事業投資
この違いを理解せずに利回りだけで判断すると、「思っていたより手間がかかる」「想定より収益が安定しない」といったミスマッチが起こりやすくなります。実際にホテル投資を行う際にはこの運用方式をしっかりと理解した上で取り掛かることをおすすめします。
【最重要】ホテル投資における「利回り」の考え方

ホテル投資を検討する際、多くの方が最初に注目するのが利回りです。しかし、ホテル投資における利回りは、賃貸マンションなどの一般的な不動産投資と同じ感覚で捉えると、実態を見誤る可能性があります。
なぜなら、ホテル投資の利回りは「宿泊事業としての収益性」そのものを反映する指標だからです。
表面利回りと実質利回りの違い
まず押さえておきたいのが、利回りには大きく分けて2種類があるという点です。
・表面利回り
年間の宿泊売上 ÷ 物件価格
・実質利回り
(年間の宿泊売上 − 運用コスト)÷ 総投資額
表面利回りは、物件価格に対してどれくらい売上が立つかを示す目安にはなりますが、ホテル投資の収益性を正確に表すものではありません。
なぜなら、ホテル運営には以下のような高額かつ継続的なコストが発生するためです。
・人件費(フロント・清掃・運営スタッフ)
・清掃費・リネン費
・水道光熱費
・設備維持費・修繕費
・OTA(宿泊予約サイト)手数料
・運営委託費用
これらを差し引いたうえで残る利益を基準に算出する実質利回りこそが、ホテル投資において本当に見るべき指標となります。
ホテル投資では「稼働率」と「単価」が利回りを左右する
またホテル投資の収益は、賃料のように固定されているものではなく、次の計算式で成り立っています。
この構造を理解することが、利回りを正しく判断するうえで極めて重要です。
稼働率とは
稼働率とは、年間を通じてどれだけ客室が利用されたかを示す割合です。
例えば、稼働率70%であれば、1年のうち約7割の日数で客室が埋まっている状態を意味します。
・ビジネスホテル:年間稼働率70〜85%
・リゾートホテル:繁忙期は高稼働、閑散期は低下しやすい
稼働率は、エリアの需要、立地、季節性、インバウンドの影響を強く受ける指標です。
ADR(平均客室単価)
ADR(Average Daily Rate)は、1室あたりの平均宿泊価格を示します。
価格設定を上げれば売上は伸びますが、同時に稼働率が下がる可能性もあるため、稼働率とのバランスが重要になります。
RevPAR(客室1室あたりの売上)
で算出される指標で、ホテルの収益力を最も端的に表します。
ホテル投資では、このRevPARが高いほど、結果として利回りも高くなりやすい傾向があります。
このようにホテル投資の利回りは、単純な数字だけで判断できるものではなく、稼働率や客室単価、コスト構造、市場環境まで含めて読み解くことで、初めて実態に即した投資判断ができるようになります。
ホテル投資の収益構造と収益性
ホテル投資の収益は、宿泊による売上を中心に構成されます。加えて、以下のような要素が収益性に影響します。
- 立地エリアの需要(観光地・都市部・空港周辺など)
- インバウンド需要やイベント開催状況
- 宿泊価格の設定と稼働率のバランス
- 運営会社の経営力
特にエリア選定は重要で、市場規模や宿泊需要が安定している地域ほど年間を通じた収益が見込みやすくなります。地方であっても、観光資源が明確なエリアでは高い収益性を確保できるケースもあります。
インバウンド需要とホテル市場の関係

近年のホテル市場を語る上で欠かせないのがインバウンドの存在です。訪日外国人観光客の増加は、都市部だけでなく地方の宿泊施設需要も押し上げています。
特に以下のようなエリアはインバウンド需要の恩恵を受けやすい傾向があります。
- 東京・大阪・京都などの大都市圏
- 空港アクセスが良いエリア
- 観光資源が集中する地方都市
インバウンド需要は為替や国際情勢の影響を受けるため変動リスクもありますが、中長期的には市場拡大が見込まれており、ホテル投資の重要な判断材料となります。
ホテル投資におけるリスクと出口戦略の考え方
ホテル投資は高い利回りが期待できる一方で、稼働率の低下や運営力不足による売上減少、人件費・光熱費・修繕費といったコストの増加、さらには売却時に買い手が限定されやすいといった特有のリスクも抱えています。特にホテルは単なる不動産ではなく「事業」としての側面が強いため、景気動向やインバウンド需要の変化、運営体制の良し悪しが収益性に大きく影響します。
そのため、投資判断においては購入時の利回りだけでなく、将来的な売却を見据えた出口戦略まで含めて検討することが重要です。立地や市場需要に加え、日々の運営データの管理状況や建物・設備のメンテナンス状態といった事業価値が、最終的な売却価格や投資成果を左右する要素となります。この点を留意しながらホテル投資を実施することをおすすめします。
まとめ|利回りだけでなく全体像を見たホテル投資を
ホテル投資は、利回りの高さや成長市場としての魅力がある一方で、リスク管理や事業理解が欠かせない不動産投資です。表面的な利回りだけで判断するのではなく、エリアの需要、市場動向、運用方法、出口戦略である売却まで含めた全体像を把握することが成功の鍵となります。
自身の投資目的やリスク許容度を踏まえ、長期的な視点でホテル投資を検討していきましょう。そして、ホテル投資を検討する際は、収益シミュレーションだけでなく、市場分析や運営体制、出口戦略まで含めて総合的に確認できる専門家や事業者に相談しながら進めることをおすすめします。